「孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会」、「相互に支え合い、人と人との「つながり」が生まれる社会」をめざして、令和6年4月1日に孤独・孤立対策推進法が成立しました。
推進法では「地方公共団体における官民連携の基盤となるプラットフォームの形成の責務」の明示がなされ、「官民が連携した支援体制整備」や「狭間の課題に取り組む団体への支援等」一丸となった支援が求められています。
静岡県における孤独・孤立対策の必要性や課題を共有し、各市町での取り組みを推進することを目的に、7月23日にシンポジウムを開催しましたので、その模様をレポートします。
村木さんからは「孤独・孤立」は誰にでもあることとしたうえで、悩み事があるときにその人が「孤独・孤立」の状態にあると、問題が複雑化・深刻化してしまうとして、社会とのつながりを基礎体力に例えてお話しいただきました。
これをふまえ、相談しなければならない状況に陥ってからではなく、防災と同じで普段から助け合う関係・つながりをつくることで、問題発生や深刻化のリスクを防ぐ・早期発見するという「予防」の重要性をお話しいただきました。
では、孤独・孤立を予防することができる地域とはどのような地域でしょうか。
村木さんは、本人と同じ目線で肩を並べることは、専門職ではなく市民にこそできることだといいます。そのために、専門職は、本人の問題を解決することだけでなく、地域の力を全部使ってその人が生活を続けていけるように、「地域を耕す(=人材を育て、地域を強くする)」ことも意識することが重要です。
落ちないよう互いに握りしめなければならない、1人しか救うことができない綱(つな)ではなく、そもそも落ちることがない、たくさんの人を包み込むことができる網(あみ)を、みんなでつくることが大切だと力を込めました。
村木さんからは、行政も企業も支援機関もみんな地域に暮らす市民であり、自分の組織の強みをいかして、みんなで何ができるかを考えていけるプラットフォームへの期待を寄せていただきました。
シンポジウムの後半では、多機関・多職種の連携を広げ、みんなで孤独・孤立の問題に取り組むしかけをつくるみなさんからのお話を聞き、異なる立場の人たちが混ざった協力の場である「プラットフォーム」のあり方について考えました。
食支援のための物流システム「ミールズ・オン・ホイールズ ロジシステム」を運営する全国食支援活動協力会。広域的な立場から食品寄贈や配送、保管を行う企業をマッチングし、地域の課題を一番知っている活動団体が必要としている人に支援を届けることができるように支援しています。
しくみをつくって終わりではなく、多様な主体による食支援プラットフォームの構築による地域の課題を解決するための協議・参加の場づくりを重視した活動をご紹介いただきました。
地域づくりは行政だけではできないし、民間だけでもできない、という気づきから生まれた「人と地域がつながるプラットフォームかまくら」、通称“ここかま”は、行政や地域の活動団体が単独では解決できない課題を共有し、主体的な共生と協創の活動が生まれる環境・仕組みづくりに取り組んでいます。
垂直の関係ではうまくいかないこと、協議体が増えるばかりでは地域が疲弊することといった課題を分析し、「地域をつなげていく力」を発揮していく鎌倉市行政の意識が「ここかま」の土台となっています。
小児科医の立場で医療的ケアを必要とする子どもと家族に向き合ってきた遠藤さん。退院に向けた院内散歩での「家に帰ってからも散歩したい!みんなに会いたい!」という声から、当事者や支援者、行政などが手をとって、外出支援事業“さんぽ会”を立ち上げ、支援する・されるではなく「お互い様」の活動を継続しています。
たったひとりのために動くことで、同じようなニーズを抱える人に支援が届いていくというエピソードから、現状を知り、「N=1」から始めてほしいと願いを込めました。
パネルディスカッションのコーディネーターを務めていただいた津富さんからは、孤独・孤立対策は地域の総力戦としたうえで、小さな種を地域全体の事業として育てていくことの重要性をお話しいただきました。
登壇者と参加者による双方向の意見交換が行われたあと、村木さんからは、1つの困りごとからスタートすることが大切で、「困りごとに共感する、ゆるい人だまりをつくること」がプラットフォームの始まりだと締めくくっていただきました。
そんなプラットフォームを静岡県で育てていけるよう、構成団体のみなさまと力を合わせていきたいと思います。引き続き、よろしくお願いいたします。